evisv インタビュー 名前・年齢——“エビス”という名に込めた家系の記憶
読みは evisv(エビス)。母方の姓が「エビス」だったことから拝借した名で、
「お母さん方のおじいちゃんにすごく可愛がられていて——
アーティスト名を考えたとき、まっ先に浮かんだのがこの名前だった」と振り返る。
周囲からは「エピス」「エビちゃん」と呼ばれることもあるという。2002年生まれ、23歳。

地元——高知市の真ん中、“なんもないを楽しめる”街で育った目線
地元は高知県高知市。
「高知市、真ん中。平地もある」と笑う。
ここで育った実感はシンプルだ——
「なんもないけど、みんな“なんもないを楽しめる力”がある」
「方言は怖く聞こえることもあるけど、人がいい」
音楽を始めてからは、むしろ高知が好きになったと語る。2
顔ぶれで言えば、Amoは「みんなの兄気分」で、地元の旗手として坂本龍馬級の存在感を背負う。AIRIEは四万十出身で、東京に行けば面倒を見てくれる先輩格——
高知全体で緩くつながる温度が心強い。
「音楽やる前は都会に憧れてた。でも始めてから“高知で良かった”と思えるようになった」
自分だけのものは何か——
そう問い続けるほど、地元で育った空白と人の温度が、evisvの輪郭を濃くしていく。

クルー:YGB——“全員が頭で行こう”という合言葉と、10人の横顔
名前は Young Geezer Brain。
geezer(変わり者=年寄りのスラング)の上に“若さ”を重ね、さらに“ブレイン=頭”を置く——
「俺らは全員が頭で行こうよ」で YGB に着地したという。
リーダー不在で始まりつつも、「一応キャプテンはいる」
ただし運営は話し合いで決める“全員脳”のスタイルだ。
メンバーの輪郭はこうだ。
「Kiskii(キスキー)」は中学も職場も同じ、“おちゃらけ系”のムードメーカー。
「GuriMela(グリメラ)」は“悪い”けどやる時はやる、仲間想いの一本気。
「Luv jack(ラブジャック)」は人として一番“ちゃんとしてる”。元美容師で、皆の面倒見も良い。
「starring(スターリング)」は“バカに真面目”なキャプテン。頼りないところも含めて、ついて行きたくなる人柄。
「daxxdeatz(ダックスディーズ)」は一時期“毎日二人で2曲作る”ほど並走した旧友。スタイルは違えど相性がいい。
「SPECTRE(スペクトル)」は中学からの仲で、最近クルーに加入。長い時間を共有して自然に“同じ船”になった。
「Kazuyuki(カズユキ)」は今いちばん一緒に動く相棒で、“初めから何でもできちゃう”天才肌。2人のEPも控える。
ラッパーの「Leedogg(リードッグ)」は“いちばんラップが上手い”。
DJ は「Kairi(カイリ)」。肩書きは付けず、“Kairi”として支える。
クリエイティブの土台は外部とも連結する。
エンジニアリングとビートは「Soul9(ソウルナイン)」が担い、「地元にそういう耳のいい大人がいるのは恵まれてる」と語る。
次作は“全部 Soul9 のビートで出す”という宣言も力強い。
“みんな歌いたがる”街の熱を束ねると、YGB は総勢10人。
自由に、でも要所は話し合いで固める——
そのラフさと規律のバランスが、evisv の現在地を押し上げている。

ラップを始めたきっかけ——夜のドライブで刺さった一言、校庭の熱、そして“仲間4人”の初期衝動
18〜19の頃、することもなく夜に車を走らせていた。
「なんでそんなに音楽好きなのに、なんでやらんの?」——
友達のひと言が刺さる。
ハンドル越しに恥ずかしさと悔しさが混ざり、「うわ、そりゃ」と腹が決まった。
きっかけは、あの夜のドライブだ。
初期編成は“仲間4人”。
機材を割り勘でそろえて、
「車の中で、ドライブのついでに、みんなで携帯で録る」ところから始まった——
雑でも、熱は確かだった。
そこから“やってみよう”が“続けよう”に変わるまで、時間はかからなかった。
遡れば、中学で火が点いている。
高校生ラップ選手権が周りで流行り、みんなで動画を追いかけるうちにヒップホップの入り口が開いた。
近くには早くから音楽をやっていたSPECTREもいて、機材や曲のことを教えてもらいながら耳が育っていく。
「自然と聴いてた」という距離感が、そのまま現在の体温につながっている。
——夜のドライブで刺さった一言、仲間4人の小さな録音、そして中学から積み重なった視聴の記憶。evisvの“最初のページ”は、その三つの線が一点で交わって始まっている。
シングル「Samidare」——チームの熱から生まれ、ソロの覚悟へつながる一曲
きっかけはSoul9との交流だった。
四万十で顔を合わせた流れから「ビートあるから、クルーで何人かで作ってみてよ」と背中を押され、まずはチーム制作で一本を形にする。
出来上がったデモを聴かせると「それ、君名義でシングル出そうよ」と話が転がり、
Soul9製のビートに“Soul9 got what u want”のタグが鳴る、evisvの「Samidare」が走り出した。
そこからは、団体戦よりも個人の歩幅で積み上げるフェーズへ——
“チームの熱で着火して、ソロの覚悟で燃やす”というスイッチが入る。
リリックは街の温度を切り取るように「銃弾のように飛び交ってるtalkは地元訛り」
地元の方言が空気を震わせる、そのスピード感まで含めて曲に焼き付けた。
了解。以後はこのトーンで統一するね。直近でズレたところ、スタイル合わせで書き直すよ。

港町・高知がくれた呼吸——“集まる”リズムがフローになる
集合場所はだいたい港だった。
夜の湿気と潮っ気の中で「とりあえず港行くか」と輪ができ、タイプビートを流しては車内で仮録り、できた順からスタジオで本録りへ運ぶ——
その“集まる→鳴らす→残す”の反復が、自然とテンポ感を決めた。
外からは「高知っぽいね」と言われることがあるけれど、こっちは自覚がない。
ただ、海風が刻む間合いと、人が寄り合う夜のペースが、気づけばフローに移りこんでいく。
“なんもない”と言いながら、実はある。
港の照明、方言まじりの会話、帰り道の長さ——
それぞれの小さな癖がビートの裏に積もって、気づくと体が先に動く曲になる。
港町の呼吸がそのままサウンドの体温になる、というだけの話だ。
いまやっているスタイル——ジャンルに線を引かず、どんなビートにも行ける耳/“アーカイブ系”で輪郭を整える
音の間口は初めから広い。
「ジャンルは問わないっす」「結構なんでも聴くし、なんでもやっちゃいます」と笑う。
最近の巡回はBig Baby Gucci、LG Maliqueあたり——教えてもらった曲も躊躇なく掘る。
「どんなビートきてもいけるようにインプットはしたい」
アングラからメインまで、線を引かずに耳を開きっぱなしにしておくことが、いまの自分の作り方だ。
服は“アーカイブ系”。
大阪の友人がやっているSirius Archivesで買ったり、撮影やライブのときに借りたりしているという。「みんなアーカイブ系が好きなんで」という言葉どおり、クルーの空気とも地続き。
NUMBER (N)INEのような質感も視界に入れつつ、楽曲のムードに合わせて細部を選ぶ——
音はジャンルレス、装いはアーカイブで輪郭を整える。
そのバランスが、いまのevisvの“見え方/聴こえ方”を決めている。

今後の動き——“近いうちに出る”。二つの仕掛けと、ラップスタア前夜
足を止めない。
年内はまず、KazuyukiとのダブルネームEPを一本、さらに客演曲もいくつか同時進行で仕上げている。「今年中にも何曲か出ると思うし、近いうち出ると思うっす」と本人。
ラップスタアの動きも含め、公開のタイミングを見据えながら、出す順番だけを冷静に整えている。
設計はシンプルだ。まとまった先線(作品)を取りに行きつつ、呼ばれた現場には迷わず出る——
“ダブルネームで一発/客演で拡張”の二面展開で温度を上げる。
リスナーに届く合図はひとつだけ。「近いうちに出る」。
その言葉どおり、次の更新はすぐそこにある。
美学——“まず自分がワクワクするか”。楽しいを起点に、感情を音で昇華する
合言葉は単純だ。自分がワクワクするものを作る。まず自分が音楽を楽しむ——
そうじゃないと周りも楽しくならない。
嬉しいことも悲しいことも、そのまま曲に投げて“楽しく”昇華していく。
いま自分にできることを、ラフに、等身大で。基準は常にそこにある。

evisv(エビス)
高知県高知市出身、2002年生まれ。
港町の呼吸をそのままフローに映すラッパー。
18〜19歳から活動を本格化し、クルーYGBの仲間と磨いた視点で言葉を刻む。
シングル「Samidare」をはじめ、ジャンルに線を引かないサウンドと等身大の温度感で存在感を高め、アーカイブ系の装いで輪郭を整える。
年内にはKazuyukiとのダブルネームEPや客演作も控える注目株。
これからの更新に期待が集まる、次世代の要注目アーティストだ。

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