インタビュー YÖSY 名前の読み方と由来——自然体の「ヨシ」、だからこそ YÖSY
読みは「ヨシ」。みんなにそう呼ばれてきた自然体のまま、アーティスト名にも採用したという。
「周りにずっとヨシって呼ばれてて、じゃあそれでいっか」
「かっこつけるの得意じゃない。自然体が一番」
——呼称の出どころは日常だ。
もともとの下の名はヨシキ。
ラップ前は本名で呼ばれていたが、やがて呼びやすい「ヨシ」へ短縮され、そのまま名乗りになった。ありふれた表記を避けるために、字面はYOSYではなく「YÖSY」を選択
——ウムラウトを添えて識別性を持たせた。
「書くと同名が多いから、かわいい丸(ウムラウト)だけ足してみた。
向こう(独語圏)だと読みは少し違うけど、こっちは“ヨシ”で」。2001年生まれ、23歳。

地元——小松で育ち、金沢では“ホームよりアウェイ”
石川県小松市の生まれ。1〜2年前に金沢へ移ったが、原風景は小松の“なんもない”感じ
——生家は自衛隊基地のすぐ横、見渡せば田んぼ道が続く場所だという。
転勤の多い基地町ゆえ、地元の友達は少なめ。
その代わりに、出会いと別れの往来でいろんな方言を自然に覚えた。たまり場は“はす池公園”。
そこで過ごした時間が、のちの曲にも滲む。
人はいい——そう言い切れるくらいには居心地の良さもあった場所だ。
ライブの本格デビューは地元クラブ「Party Trump」。
客は多くなかったが、ここで“ちゃんとやる”最初の一歩を踏んだ。
一方、引っ越し先の金沢は、YÖSYたちの音楽性にとって“ホーム”より“アウェイ”。
ヒップホップの浸透は他県より薄く、新しいものが入ってくるのに時間がかかる土地柄だと感じている。
ここ数年で理解者は少しずつ増えたものの、ステージに立つたび漂う“アウェイ感”はまだ消えない。
——小松で育ち、金沢で試す。静かな田んぼ道と、保守的な街の空気。
その両方を呼吸しながら、YÖSYは“アウェイ”を更新の場所に変えていく。

ラップを始めたきっかけ——父のラジオから“Tay-Kのニュース”へ、悪ノリとエモを経由して
最初の種は家の中にあった。
父が流していたラジオやCDで、MC漢やキングギドラ、OZROSAURUSに触れていた記憶がある。
決定打になったのは、ある日目にした「海外のラッパーが逃亡中」というニュース。
調べるとそれがTay-Kで、「なんなんだこの人」と曲を再生した瞬間、悪ノリの温度に一気に惹き込まれた。そこからUSにハマり、扉が開いた。
高校期はエモへ沈み込む時間が長い。
XXXTentacion、Lil Peep、Juice WRLDを一通り掘り、「やっぱやばい」と確信を深める。
同時に、日本ではKOHHやMonyHorse
——“10年前の王子のノリ”の衝撃が現在のスタイルにも影を落としている。
中三の頃は学校を休みがちで、とにかくディグしまくっていた、と笑う。
態度は終始、力が抜けている。
「今も“フワッと”っすよ。人以上に考えてないかも。
考えすぎて音楽やると嘘くさくなっちゃう。僕はそう」
音楽は“自己満”だが
「オナニーじゃなくて、タイムカプセル的な。こんなことあったな、って残したい」と位置づける。
背中を押したのは身近な刺激だ。
周り——とくにYamiboi To$——が本気で動き出すのを見て、「俺もやりたい! 楽しそう!」と制作へ踏み切った。
出発点は軽やかで、視線はまっすぐ。そこからYÖSYの現在地が始まっている。

ミックステープ『ROUGH TAPE』——“ラフに選んだ9曲”、気楽でいく、素直で鳴らす
由来は文字どおり。
レコーディングは続けていたが、
しばらく未公開だった楽曲を「ラフにチョイスしたもの」を9曲まとめて放出した。
「サンクラに出すのはもったいないな」と感じて、
あえてミックステープという形で世に出した経緯だ。
テーマは過度に設けない。
「感覚でやったものが多い」「しいて言うなら“気楽でやる”」
飾るよりも“素直”を優先し、いまの手触りをそのまま残す方を選んだ。
ジャケットは“自画像でいく”と決め、108のスタジオで108のデジカメを使って撮影。
108が持っていた『PLAYBOY』の誌面に「これ、おもしろい」と触発され、そのレイアウト感を“サンプリング”してデザインを組んだ。
制作は108本人。「ミックス/マスタリングからアートまで一人で担う」頼もしさも、この作品の“ラフ”を支えている。
黒ひげ——“みんな海賊友達”じゃない、狭く深くの旗印
今のラップシーンには“ルフィっぽい”温度——コレクティブで全員が友達、という動きが多い。
でも自分は違う。群れよりも狭く深く、ひとりで動く方がスタイルに合う。
だから「海賊ではありたい」けど、選んだのは“黒ひげ”。
タイトルも先に掲げたスローガンじゃなく、リリックを書いたあとに「ちょうどいい」と落ちた。
曲のノリは“調子乗ってんな”と笑えるくらい直球で、オールド・グッチ・メインの手触りを意識したビートに、宇宙語みたいなフロウを先に走らせてから言葉を当てはめていく作り。
ネームドロップでキャラクターを作り込むより、ありのままの心拍で書く
——「綴ってく歌詞草薙みたい全裸」。
不祥事で捕まったアイドルのエピソードを遠く参照しつつ、飾らない自分をそのまま出すという宣言でもある。
「フリースタイルって言われたらそうかも。でも人生の方がフリースタイルしてるっすね」。
黒ひげは、その肩肘の抜け方ごと鳴っている。

繁盛FLOW——“楽”でいく、金は欲しいが嘘はつかない
“夢”じゃないけど“繁盛”はしたい——その実務的な温度から生まれた一曲。
気負ったらそれはもう「音“楽”」じゃない、だから肩の力を抜く。
「気持ちは、音楽なんで。清ったらもう音楽じゃない——楽じゃない」と彼は言う。
制作の発火点は、当時バズっていた“某配信者”を巡る話題。
「俺らはする繁盛、でも騙さない。する real talk」
——金は欲しい、けれど金のために人を欺くことはしない、という線引き。
そのスタンスごと曲に封じた。
この曲をミクステに入れるかは最後まで迷ったが、「PLAYBOY」の誌面端にある“怪しい広告”みたいなノリを思い出し、「あの感じ、今の空気に合う」と採用を決めた
——画面の隅っこからニヤリと盛り上げる配置で、盤の表情に遊びを足す。
言葉遊びの温度も抜かりない。
Yamiboi To$ と同時期に口癖になっていた「バーロー」をラインへ落とし込む。
「言うコナンみたいに妙だな/バーロー」——スラングに“しようとする”のではなく、自然に定着した語感をそのまま置く。
日常の笑いと倫理の線引きを、軽やかなフロウで一筆書きするのが「繁盛FLOW」だ。

CoinRocker baby——暗い箱と村上龍、その両方を前向きにひっくり返す
書いたのはずっと前。
たぶん1月ごろ、いろんなビートを試していた時期に生まれた曲だという。
金沢のクラブで、人のいない“暗い箱”に立った夜
——「ロッカーの中と一緒やな」と感じた実感と、
読書期に出会った村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』が重なって、タイトルが決まった。
意味は“深すぎない”けど、たしかにこもっている。
設計は明快だ。
マイナスをプラスに反転させるのがラップの力だと思って、
「暗い題材だけど明るい曲にしよう」と決めた。
自分に向けたラインが多く、「今マシ/無償の愛は当たり前じゃない」と針を振り切る。
家族への視線も率直だ。
「完璧だけ認めるマミー」「ロック教えてくれたよダディ」
——母の厳しさと、音楽を肯定してくれた父の“自由に生きろ”。
どちらも恨んではいない。むしろ「この環境に感謝は忘れねーよ」と続ける。
まだ箱の中で泣いている——けれど、その泣き声で気づいてほしい。
自分も、みんなも。明るいビートに置き換えたのは、その願いを前へ運ぶため。
ネガもあるが、基本はポジティブ。
「思ったことを書いてるだけ」——そんな素の速度で、CoinRocker baby は鳴っている。
ミクステの“耳”——108は、人間味と職人技で支える“お父さん”
「人間味が溢れるひと。極端な人だけど、いい意味でお父さん感がある」
レコーディング/ミックス/マスタリングまで石川で“ぶっちぎり”の腕前で、いなかったら困る
——なくてはならない存在だ。
すごい人だけど、距離は近い。
紹介の起点はYamiboi To$。そこから現場が続き、金沢のシーンでもキーマンとして名が挙がる。
仕事は“声とビートに合わせる”ことに尽きる。
プリセットを人ごとに変え、特徴を掴んで音楽にする。
最近はオートチューンなしの楽曲も多いが、それでも仕上がりを一段上げてくれる
——だから任せられる。
——技術と人間味。その両方で背中を押す“近しい巨人”。
108の耳が、このミックステープの温度を決めている。

今後の動きとリスナーへ——1stアルバム『楽(らく)』、気楽にハードに
次の一手は、1stアルバム『楽(らく)』
——11月すでにリリースされており、各所で話題となっている。
毎回“同じことはしない”を合言葉に、ノリを更新していくつもりだ。
リスナーに向けては、まっすぐに。
「いつも聴いてくれてありがとうございます。まだ注目度は高くない時期から聴いてくれるのは、いい意味で変態だと思う。そんな人たちに恩返しできるように、気楽に、でもハードにやっていきます。よろしくお願いします。」

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